ヒャン
Calliophis japonicus japonicus コブラ科


  ヒャン
 南西諸島の奄美大島他一部の島に棲息する小型のヘビです。全長は30cm〜50cmくらいでしょうか。コブラ科の仲間でもサンゴヘビ類に近い感じですね。コブラの仲間というとタイやビルマ、インド等にいるフードを広げる大きなヘビのイメージがありますが、実際にはそれらはコブラ科の一部に過ぎず、本種やサンゴヘビの他にウミヘビ、あるいはクサリヘビの仲間にひじょうによく似た種などじつに様々です。ただ、ナミヘビと明らかに異なるのは、一貫して神経毒を有する有毒動物で、高い殺傷能力を持つ危険種がひじょうに多いということです。進化系統的には、ナミヘビの後牙類のような有毒動物から、クサリヘビの仲間と共に分化し、その後様々な種を輩出する大きなグループに発展していったのでしょう。
 コブラ科やクサリヘビ科の仲間は、最も進化的でたいへん繁栄している仲間です。世界中のあらゆる環境に適応した様々な種を展開し、ウミヘビに至っては海洋生活にまで適応しています。現生の爬虫類としてはウミガメと並ぶ快挙ですね。
 

  ヒャンのペア
 大型のコブラとちがって、本種やサンゴヘビは、俊敏で攻撃的な動物ではありません。徘徊性で動作はゆっくりしており、落ち葉ややわらかい土の中に潜り込んで暮らしているようです。ひじょうに鮮やかな色彩と模様は警戒色ですね。小型の捕食動物が生き物の気配を感じて掘り起こしてみると、保護色とまったく反対の強烈な色彩のヘビが出現した、これはそのヘビが有毒であることのサインです。捕食動物は危険を察して食べるのをあきらめるかもしれません。もっとも毒ヘビを好んで捕食するような哺乳動物もいますけどね。
 大型のコブラのように高い攻撃力で獲物を襲ったり身を守ったりといった習性は見られません。鮮やかな色あいの警戒色で宿敵を退けるという防戦一方で、自ら敵に向かって行くことはありません。万一捕まってしまった場合も、多くのヘビに普通に見られるような噛みつくといった抵抗はほとんどなく、尻尾の先で刺してきます。尻尾の先端が高質化しており、刺されると鈍い痛みがあります。これは他では見られない独特の防御法ですが、あまり効果はなさそうです。尾端はとがっているものの針のように相手を負傷させるほどではなく、鉛筆の先で突つかれたていどのダメージです。痛いというより不快なので手を離したくなるていどで、これで獰猛な捕食動物を撃退できるとは思えません。せっかく毒を持っているのに活用しないんですかね。



 多湿を好むヘビだということで、筆者がよくやるような飼育レイアウトはせず、よく使う広葉樹のワラの代わりにミズゴケを厚く敷き、シェルターや石ころ、水入れを所狭しと配しました。人に慣れてくれることよりも、飼育環境に馴化し、マウスに餌づいてくれることを期待しました。
 結論から申しますと、3ヶ月足らずで雌雄とも死んでしまいました。その間にメスがマウスを1度だけ食べ、糞の排泄も見られたのですが、あきらかに確認できた採餌はそれだけでした。ショップの店員さんも珍しいヘビなので自分用にストックされていたそうですが、短命で飼育を終えお腹から大量の寄生虫が出てきたそうです。

 ↑ 脱皮前の様子。皮が浮いている
 ショップのオーナーが沖縄のハブ採り名人の知り合いがあり、そのルートで入手したそうですが、原産地でもそうそう目撃できないひじょうに珍しヘビだそうです。ネットの情報によるとメクラヘビなどを捕食するとありましたが、メクラヘビ自体がもともと外来動物で日本にはそれほど多くはないと思われます。もちろん他の小さなヘビやトカゲ、カエルも食べるのでしょう。飼育下でもマウスではなく最初はそうした変温動物を用意した方が良いと思われますが、ショップではヤモリやカエルを与えたにも関わらず餌づかなかったそうです。
 有毒動物ですが、飼育には危険はなさそうです。しかしながらコブラ科ということで動物愛護管理法により特定動物の指定を受け飼育は禁止されています。筆者が飼育した2000年当時はまだ規制がゆるく、多くの毒ヘビが市場に出回っていましたが、現在は取り締まりもひじょうに厳しく、有毒のヘビを手に入れることはできません。また、それよりも大切なのは、本種が準絶滅危惧種としてレッドデータに記載されていることです。自分が飼育に手を染めながらこういうことを言うのは矛盾していますが、希少種の保護の観点からも飼うべきではありませんね。最近の取り締まり強化によって本種が市場に出回るようなことは今後はないと思いますが。
 2000年当時の筆者は、このおとなしくて可愛らしいヘビの飼育が禁止されているとは知らずに飼育したわけですが、特定動物や特定外来種に関する知識を得た今になって考えると、ヒヤヒヤものですね。
 2014年現在、外来生物に対する取り締まりをさらに強化するという話しを聞いたことがあるのですが、それなら食品や天然資源の一切を取り締まり、鎖国を実施しないことには外来生物をシャットアウトすることはできないのですがね。また、外来という概念は人間が勝手に定義しているもので、国内での生物の行き来が自然環境に被害をもたらすことも当然あるわけです。捕まえた虫を別の環境に逃がすことの危険性は無視して、外来種の取り締まりを強化して自然保護と言うのは漫才でしかありません。政治家って漫才好きですよね。

▼ index へ000