ウェスタンホッグノーズ(セイブシシバナヘビ)
Heterodon nasicus ナミヘビ科


  ウェスタンホッグノーズ
 北米のナミヘビの仲間としては、ペットとして高い人気を誇る有名なヘビですが、セイブシシバナヘビ以外にも、トウブシシバナヘビ、ナンブシシバナヘビがいて北はカナダから南はメキシコまで広く分布しています。その中でセイブシシバナヘビが最も流通しており、サイズ的にも最大約150cmと、最も大きくなります。
 温和で飼いやすく、飼育下での繁殖も期待できると言ってよいヘビではありますが、じつは個体によってかなりクセが強く。場合によっては飼育に失敗してしまう、つまり短命で死なせてしまうことも少なくありません。

 ↑ 腹面は黒っぽい
 それは本種がカエル食いであることと、寒冷な季節が近づくと早々に休眠状態になって採餌しなくなる習性があることに起因しています。このことを理解していれば、拒食が続いてもその理由を知っているのでそれほど不安になることもないでしょう。ヘビは休眠状態になると、一見して普通に見えても代謝が落ち、長期間の拒食でも痩せてくるようなことはありません。拒食が続くとつい心配で、強制給餌に踏み込んでしまうこともあるかもしれませんが、それが原因で死なせてしまうこともあります。ナメラ属のラットスネーク類の幼蛇の餌づけにはひじょうに有効な強制給餌も、休眠状態のヘビにとってはダメージになることがあるのです。

 ↑ 脱皮前の目の白濁
 本種に関してはCB個体がよく流通しているので、あえてWCを選ばず、CBを購入することをお勧めします。市販の個体はたいてい幼蛇で、ショップで餌づいていても、買って帰るとそうはいかないケースも多いので、気長に慣らして行きましょう。ケージは個体のサイズにあったものを選び、大きすぎるものは禁物です。野生ではカエル食いであることから、多湿を好みますがウェットシェルターを用いるよりも大きめの水入れにたっぷり水を満たしておく方が良いです。シェルターは馴化を遅らせる原因にもなります。また、脱皮不全を防ぐためにも大きめの水入れは必須です。

 ↑ マウスを食べるところ
 カエル食いであることから、拒食が続く場合はマウスへの餌づけを断念してカエルを与えるというのは、あまり良策ではありません。栄養価を考えるとカエルはたくさん与える必要があるうえ、常時生きたカエルをたくさんストックしておくのはなかなか大変で、ヘビを飼うよりも手間がかかってしまいます。また、野生で採集してきたカエルを与えるとほぼ確実に寄生虫をもらってしまいます。腹に寄生虫を宿したヘビはなかなか成長せず、悪くするとどんどん衰弱して行きます。根気よく付き合ってマウスに馴れさせましょう。方法のひとつとして、生きたカエルにマウスをなすり付けて与えるというのも有効です。
 せっかくマウスに餌づいたのに、ある時急に拒食するようになることがあるのも本種の特徴です。他のヘビでもなくはないですが、本種はとくにオスにそれが目立ちます。専門書などによると、夏以降の気温の低下を冬の到来と認識して休眠モードに入ることがあるなどと解説されていますが、春先や真夏でも突然の拒食が起きる場合があります。ケージの隅で丸くなったまま数日同じ姿勢でいたり、床材の中に潜り込んで動かなかったりすると、休眠状態と見てよいでしょう。こうした突然の休眠状態はあきらかにオスに多く見られます。中には飼育環境に慣れないせいか、しきりに動き回るにも関わらず拒食に突入してしまう場合もあります。なんだかよく判りません。
 休眠状態の個体に、冬じゃないことを教えるために飼育温度を上げるというのが逆効果になることもあります。温度の上昇は代謝を促進させ、エネルギーの消費を高め痩せさせてしまうのです。拒食が長期間に及ぶ場合には、思い切って冷暗所に移してしまいます。新鮮な水は切らさないようにし、そこで休眠させてしまうのです。そうして1ヶ月くらいしてから暖かい場所に戻します。この方法で食欲の回復に成功した場合もありますが、採餌を再開したもののまたすぐに拒食モードになってしまったケースもあります。気難しいヘビです。
 とにかく気長に根気よく付き合って、飼育者とヘビが良好な関係を築くほかありません。そしてそれは可能です。筆者が長年飼っているメスは、冬場も加温していれば拒食しませんし、飼育者を見ると寄ってきます。繁殖を臨まず長期的に安心して飼うなら、メスを選んだ方がよいかもしれません。そこそこ成長したオスを入手できれば、適切なクーリングを行なってペアリングを試みましょう。食欲の差で、メスの方がずいぶん大きくなってしまったようなケースでもペアリングは可能です。ただし、サイズ差にも限度というものがありますから、あまり小さなオスはメスにとって餌と認識されてしまいます。何しろ本種はカエル食いすなわち変温動物食ですから。

  水浴中
 述べてきたうようなクセの強さ以外にも、本種はなかなか個性的なヘビです。ほとんどくびれのない首と丸っこい頭、とがった口吻というルックスはひじょうに愛嬌たっぷりで、動きはとても緩慢で、すばしこいヘビにくらべるととても扱いやすいと言えるでしょう。幼蛇は警戒心が強く、シューシューと噴気音を立てて威嚇してきますが、それも飼い込むうちになくなります。また、見に危険を感じると悪臭を放って裏向けになって擬死すなわち死んだふりをしますが、これを飼育下で目撃することは少ないでしょう。擬死を観たくて脅してばかりいると飼育者に馴れてくれなくなります。
 餌を食べる行動もひじょうに特徴的で、ラットスネーク類やボア類に見られるような飛びかかって締め上げるようなことはせず、大きな口を開けて食いつくと、ジワジワと飲み込んでゆきます。本種は後牙類です。奥歯に毒を持っていて、深く噛まれた獲物は毒が回って動けなくなります。飼育者が噛まれて負傷したという事例はほとんど聞きませんが、噛まれるた場合は無毒なヘビの時よりも傷が大きくなり痛みと腫れを伴うでしょう。

  アルビノ
 本種は人気種で多くのブリーダーが繁殖を手がけていることから、最近では様々な品種が出回るようになりました。アルビノについてはむかしから少ないながら流通がありましたが、斑紋が淡い色に変異したグリーンやイエローと呼ばれる品種、斑紋がスポット状に変化したアナコンダと呼ばれる品種。またアルビノにも従来の淡い色のものから鮮烈な赤色を呈するものまでさまざまです。ブリーダーの方々の執念というか意欲に頭が下がります。今では日本も優れた品種を作出する爬虫類先進国です。
 セイブシシバナヘビ以外のトウブやナンブにもアルビノや黒色変異といった品種が存在するようですし、トリカラーホッグノーズといわれるミルクスネークのような3食バンドのヘビも時折ペットトレードに登場します。

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