コーチウィップスネーク(バシャムチヘビ)
Masticophis flagellum testaceus ナミヘビ科


  コーチウィップスネーク
 北アメリカの乾燥地帯に生息するヘビで、日本での流通量は多くありませんが、とても個性的で魅力的なヘビです。生息地域の東西で、ウェスタンコーチウィップスネーク(M.f.testaceus)とイースタンコーチウィップスネーク(M.f.lagellum)の2亜種が存在し、筆者が飼っていたものは前者になります。イースタンの方が生息個体数が多く、色彩変異もさまざまです。赤みを帯びるもの、灰色が強くなるもの、黒化個体等々。右の写真すなわち筆者が飼育した個体は、ほぼノーマルです。
 コーチウィップとは、馬車馬に使用する鞭のことで、和名でバシャムチヘビとも言います。このヘビの形態をよく表しているネーミングだと思います。

  コーチウィップスネークの頭部
 本種は、典型的な樹上性で、木々の間をすばやく移動して小さな爬虫類や哺乳動物を捕食します。体はやや硬く、樹上で長く伸ばした上体を支えるのに適しています。多くの体の柔らかいヘビのように木にしっかり巻きついて体を支えるのではなく、木々の形状をうまく利用してすばやく移動します。よくしなる鞭のような体が樹上でのすばやい行動に役立っています。また多くのヘビのように体をジグザグに曲げる咬蛇ポーズからバネの力を利用して獲物に飛びつくといった行動は見られません。頭部は細長く口吻がややとがって少し鳥に似ています。徘徊性のヘビのように大きな獲物を捕ることは少なく、トカゲやヤモリ、カエル、小さな哺乳類などに狙いを定めてすばやく飛び掛かります。

  立体視に適した目
 夜行性動物が多いヘビの仲間としては、珍しく昼行性です。ヘビは目が良くないとされていますが、本種に限っては高い視力のよく見える目を持っています。正面から頭部を見ると、両目が並んで前を向いており立体視に適していることが判ります。獲物との距離を目で正確に把握し、確実に飛び掛かります。飼育下でも餌を差し出すと的を外すことはほとんどありませんでした。コーンスネークやキングスネークのように、嗅覚や熱を頼りにするヘビはしばしば的を外して人の手に噛み付いたり、空振りしてケージから飛び出したりしがちですが、本種の襲撃はひじょうに正確です。



 樹上生活者である本種の生態を考えれば、飼育環境は高さのあるものが必要になります。また目が良く昼行性であることから、ケージ内に小枝や青葉をレイアウトとして使ってやるとヘビが落ち着くと思います。
 樹上性のヘビは気が荒いと聞いたことがあります。確かにグリーンパイソンは人を見ると飛びついてくることが多いですし、カーペットパイソンなどは、立体的なレイアウトを仕立ててやると気が荒くなるようです。しかし筆者の観察では、気が荒く攻撃的であるというより、むしろ親交的に見えるのですが。本種も飼育環境や飼育者に馴れると、人を見ると近づいてくるようになり、人の手から餌を取るようになりますが、ハンドリングは苦手で、捕まえようとすると噛み付いてくることが多いのです。
 このヘビをショップで購入したばかりの頃は、普通にハンドリングしていたのですが、飼い込むに従ってハンドリングの際に噛まれることが多くなりました。噛まれるのは好きじゃないので、掃除等で捕まえる必要があるときは餌をくわえさせていました。ヘビがマウスを飲み終わるまでは安全にハンドリングができました。
 気が荒いことで有名なグリーンパイソンも、同じ方法で取り扱っていましたが、筆者が長年飼い続けたグリーンパイソンはかなり温厚になり、ハンドリングも可能でした。人が近づくと寄ってくるのも本種と同じでした。
 ヘビではありませんが、ツリーモニターの仲間、コバルトブルーモニターやエメラルドツリーモニターも慣れると人を見ると寄ってきて、人の手から餌を受け取るようになったのですが、ハンドリングはかたくなに受け付けませんでした。樹上生活者はクセが強いようです。




 飼育下での冬眠の様子
 コーチウィップスネークは、他の多くの北米のヘビと同様に、冬場は冬眠します。飼育下でも冬場加温してやらないとシェルターの中にこもって動かなくなります。もちろん加温して冬眠させずに飼うことも可能で、20℃ていどの飼育温度を維持してやれば普通に活動しますし餌も食べます。これ以上高温にしないのであれば、冬場は餌を控え、ヘビが痩せてこなければ給餌を行なう必要はありません。成蛇の場合では、ヘビの調子を見ながら2週間に1度から1ヶ月に1度の給餌でも大丈夫です。飼育温度の低下に合わせて代謝も下がるので、給餌回数を減らしても痩せてこないでしょう。それよりも飲み水は冬場でも欠かさないようにします。乾燥地帯の生き物なので、乾きにも強いのですが、水分補給が無用なわけではありません。

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