シロマダラ
Dinodon orientalis ナミヘビ科


  シロマダラ
 北海道〜九州、大隅諸島の低産地に棲息する小型のマダラヘビです。マダラヘビの仲間は、その明瞭なバンド模様から付けられた名称だと思いますが、筆者のイメージではナメラ属のヘビなどに比べやや体が硬いイメージがあります。日本固有の希少種です。これを見つけるのはひじょうに困難で、地方によっては幻のヘビとさえ言われているそうです。

  シロマダラの頭部
 基本的には地上性で、トカゲやヤモリを捕食します。本種自体が35〜70cmと小さいので、大きな獲物は狙えませんし、場合によっては本種の方が他の爬虫類や両生類の餌食となってしまうことでしょう。日本に棲むマダラヘビ属には、アカマタやアカマダラがあり、ともに1メートルを越えるそこそこ大きなヘビです。これらのヘビは沖縄地方に棲息し、アカマタでは競合するナメラ属のヘビがいなかったためにずいぶん大型化していて2メートルに達する個体もいるそうです。それに比べると本種は、ひじょうに小さなヘビです。
 シロマダラの頭部は、スリムな胴体に比べて大きく、そこそこ大きな獲物でも飲み込むことができます。頭部は黒く目は目立ちません。小さくてもなかなか血気盛んで、危険を感じると咬蛇ポーズを決めて威嚇します。擬死(死んだふり)をすることもあるそうですが、筆者は見たことがありません。
 筆者が調べたいくつかの文献では、本種は地上性であると解説されてありましたが、大きな頭部や硬い体は樹上性の小型ヘビの特徴に一致します。おそらく本種も木に登ってトカゲの子供などを襲ったりもするのでしょう。
 筆者が入手した個体は、知人の家の庭に出現したものを譲り受けました。知人は爬虫類に興味を持つ人ではないのですが、筆者が爬虫類好きであることを知っていて、捕獲してくださったわけです。爬虫類好きであることを公表していてよかったです。知人宅は大阪の北摂山系から近い住宅地にあります。閑静なところですが、開発が進んでおり大きな道路が整備されいるので、こんなところに本種が出没するのはちょっと驚きです。
 岡山県で爬虫類ショップを営む、この道の権威の方に電話したところ、その人でも生涯で5回ていどしか本種と出会ったことがないことと、餌づけができなくて長期飼育ができたためしがないことを知らされました。

  マウスを食べるところ
 一流の飼育者でも長期飼育が容易でないという知らせは、とても残念でしたが、手に入れた以上最善を尽くして飼育するしかありません。最初の頃は当然のことながらシェルターにこもりっきりでした。本種は夜行性の傾向が強いのでなおさらですね。
 仕立てたケージは、最もオーソドックスなもので、小さなプラケースに広葉樹のワラ(ハムスター用に市販されているもの)を敷き、小さなタッパーにミズゴケを詰めたウェットシェルターと水入れを置くというもの。プラケースのサイズは15cmくらい。これ以上大きくするとヘビが飲み水を見つけられないことがあります。そして給餌ですが、Sサイズのマウスを半分に切り、これに生きたモリアオガエルの体液を塗り込んでタッパーの上に置き餌にしました。マウスをこすりつけられたモリアオ君はたいそう迷惑そうでした。オシッコを飛ばして逃げやがりましたからね。
 基本的に変温動物食なので、このヘビがカエルを食べた経験がありその匂いを覚えていたなら、マウスを餌だと認識してくれることも期待できます。この給餌方法を繰り返すうちに、ある朝、マウスがなくなっていました。飼育を開始してまだ数日だったのでまさかと思ったのですが、マウスはどこにも見当たらず、ヘビが食べた可能性を期待できました。
 それから数日してヘビの糞が見つかり、次はカエルを塗り込まないマウスも置き餌でなくなっていました。そしてその後はコンスタントにマウスを食べるようになりました。ベテランの飼育者でも餌づけが難しいというのに、これは素晴らしい戦果です。勝因はカエルの匂い付けだったのでしょうか。この方法で本種が容易に餌づくなら、多くの飼育者が長期飼育を実現しているでしょうから、うちのシロマダラのケースは、まれに見る幸運だったのでしょうね。

  脱皮前の白濁
 餌づくと、飼育環境にも飼育者にもよく馴化し、そのうち人を怖がらなくなりました。人の手から直接マウスを食べることもしばしばで、ハンドリングしても咬みついたりしなくなりました。そして日中でもシェルターから出ていることが多くなりました。夜行性といわれる動物が、飼育下では日中もよく活動し、昼間でも人の手から餌をとるようになるというケースはよくあることです。昼行性の動物が暗闇で活動するようになることはありませんが。
 そして飼育を始めて4ヶ月もすると、シェルターはほとんど無用の産物で、昼夜を問わず姿を見せるようになりました。シェルターに入っているのは、脱皮前の白濁のときぐらいでした。

  水浴中のシロマダラ
 2001年9月に入手して、冬は加温して餌を与え続け、ほぼコンスタントに採餌を続けていました。そして翌2002年の夏は、日中はしばしば水浴していました。これは飼育環境が暑すぎるためです。マダラヘビの仲間は基本的には南国の生き物です。本種は本州北部から北海道にまで分布を拡げていると聞きますが、寒いより暑い方が得意なのだろうと思っていました。餌もよく食べるし、飼育温度は高めで問題ないだろうと。ところが、順調に採餌しているにも関わらず一向に成長が見られず、その年の9月、飼育を開始してちょうど1年で死去しました。
 当時の筆者は、敗因は高い飼育温度が続いて消耗してしまったと考えていましたが、発育不善は寄生虫が原因だった可能性が高く、死因もそれだったかもです。小型のヘビは、大型のヘビほど顕著な発育が見られないので、発育が悪くてもあまり心配しませんでした。死去する直前まで見かけ上はとても元気にしていたのですが、じつは体の中は弱っていたのかもしれませんね。
 検便をしてきちんと駆虫を行ない、夏場の温度管理ももっと適切に行なえば、長生きさせられたかもしれません。残念です。



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