キングスネーク
Lampropeltis getula ナミヘビ科


  カリフォルニアキングスネーク
 コーンスネークと共に、北米大陸を代表するナミヘビです。そして飼いやすさ手頃なサイズで、コーンスネークと共にペットトレードの代表選手でもあります。ただし、コーンスネークよりもいささか気が荒い感じがするので、温厚で自在にハンドリングができるまでに馴らすのには少々手こずるかもしれません。手こずらない個体もいますけど。
 キングスネークの名称は、もちろん王様ヘビという意味です。けっして大蛇でもない本種に、王様ヘビの名が与えられた背景には、彼らがヘビ食いの習性を持つことがあります。そのむかし、本種がガラガラヘビの幼蛇を捕食するのを目撃した学者先生が、アメリカでもっとも恐れられている大型で猛毒を持つガラガラヘビを食べるなんて、これぞヘビの中の王たるヘビだと感銘を受け、この名を与えたそうです。なかなかおちゃめなネーミングセンスですね。

  サウスフロリダキングスネーク
 キングスネークは、複数の種と多くの亜種から成ります。コーンスネークを含むナメラ属にもじつに多くの種が含まれますが、コーンスネークの名で呼ばれるものは1種ですし、亜種もほとんど知られていません。ところがキングスネーク属の中にはキングスネークの名がつくものが山ほどいて、専門書等でキングスネークを紹介する場合は、キングスネーク属として複数の種をまとめて紹介するのが普通です。さらに同属のミルクスネークの名で呼ばれる種も、しばしば同時に紹介されます。本項ではとりあえずキングスネークの名のつく種について述べることにします。

  スペックルドキングスネーク
 種や亜種が多いので、当然ながら様々な模様のヘビが見られます。そして人為的な交配によってさらに多くの模様の個体が作出されています。キングスネークの模様の中でももっとも顕著な特徴はバンド模様でしょう。これはコーンスネークには見られない特徴です。白黒のシックなツートンカラーであったり、トリカラー(3色)であったり。あまりにも鮮明なバンドは、崩しようがないと思いきや、ストライプや無地の個体もいたりします。バンド系以外にも複雑な斑紋を持つ種もあります。

  デザートキングスネーク
 キングスネークは、確かにヘビやトカゲを捕食しますが、飼育下ではマウスだけを与えていれば良いです。飼育できるほとんどのヘビにとってマウスは万能食で、これだけ与えていれば他に何もいりません。飼い方はコーンスネークと同じです。じつはコーンスネークも自然界では幼蛇のうちはトカゲ食いなのです。おかげで自然界のピンクマウスはヘビに食われることをまぬがれ、滅びの危機を脱しています、かどうかは解りませんが、これもよくできた自然の摂理なのかなぁ、なんて思ったりもします。トカゲ食いのコーンスネークの幼蛇を容易にマウスに餌付けできるように、キングスネークのマウスへの餌付けも容易です。むしろ種によってはコーンスネークより容易なくらい。

  メキシカンブラックキングスネーク
 キングスネークは、最大種でも2メートルくらいで、多くは1メートルそこそこから150cmていどです。必要なケージの大きさもコーンスネークと同じで良いです。ただ、決定的にちがうのは、キングスネーク属のヘビたちにはヘビ食いの習性がること。たとえ雌雄であっても同居はさせられないので、必ず1頭ずつ単独飼育します。
 キングスネークは、コーンスネークよりも気が荒いと前述しましたが、それは人間の認識であって、臆病であると表現できるかもしれません。コーンスネークも人に馴れていない幼蛇ではひじょうに攻撃的ですから。なので、キングスネークの場合も多くの種が飼い主にひじょうによく馴れ、人を見ると寄ってくる、ハンドリングもたいへん容易という理想的なペットになってくれます。種によってはかなり手こずる場合もありますけど。

  ヌエボレオンキングスネーク
 じつは白状しますと、筆者はキングスネーク属のヘビをそれほど飼ったことがなく、キングスネーク4種とミルクスネーク3種の計7種しか飼育経験がありません。これはキングスネーク属のごく一部に過ず、キングスネークを語るにはいささかおこがましい気もしています。その乏しい飼育経験の中で申すならば、ミルクスネーク3種とグレーバンドキング、メキシカンブラックキングは、理想的なべた馴れにすることができたけれど、スペックルドキングはずっとアグレッシブなままだったし、プレーリーキングは、べた馴れだけどとりあえず咬みついてくる、それがイヤで餌に食いついている時しか触らないという状況でした。この性格の差異には雌雄でのちがいは観られなかったので、種または亜種ごとの性格差なのだと思われます。

  グレーバンドキングスネーク
 キングスネーク属に詳しい方の話しや記述をまとめますと、キングスネークは概して気が荒い、動いているものは何でも餌と見なして食いついてくる、指に咬みついたりした場合、放っておけばあきらめるなんてことは少なく飲み下そうとさえする、という具合に初心者が飼育を断念しようかと思うような意見が多いです。気が荒いというより食に対して貪欲なので咬みついてくる、そんな感じらしいです。キングスネークベテランの某氏によると、相手がトカゲであろうとカエルであろうと、はたまた昆虫すらも、とにかくタンパク質イコールご馳走といった有り様なのだそうです。しかしながら、ネットでキングスネークの画像を検索すると、ひじょうに多くのハンドリング画像が見つかりますし、ショップでも店員の方が平気で手に持っているのを何度も目撃しています。筆者の経験では、プレーリーキングは貪欲なゆえに咬みついてくるという性格がよくでていましたが、スペックルドキングについては、明らかに獰猛といった態度でしたね。とにかく何か気配を感じるとすぐに咬蛇ポーズといわれる攻撃姿勢をとるので、いつ見ても怒っている感じでした。ヘビに馴れてくるとそれがまた可愛かったりカッコイイと感じたりするわけですけど。そして残りの種については、いつでもお手軽にハンドリングしていました。

  プレーリーキングスネーク
 いずれにしても、キングスネーク属のヘビたちが貪食で、餌と認めたものには積極的に飛びかかることは間違いないので、ペアの同居はもとより、異なる種のヘビとの同居も不可です。このようなヘビとコーンスネークを交配してジャングルコーンを作出したブリーダーはすごいですね。
 キングスネークの貪食のメリットは、餌づけやすいことです。市販の幼蛇であってもお店でマウスに餌づいている個体は、購入者のところでもよほどのことがない限りすんなり餌を食べてくれます。冬場でも加温していれば食欲は衰えません。温度が足りないと拒食することがありますが。キングスネーク属のヘビも自然界では冬眠の習性があるので、飼育温度が足りずに拒食しても心配することはありません。温度が低くなると代謝が低下してエネルギーの損耗を抑えるので、拒食が続いて痩せてしまうこともありません。それより怖いのは、食べたあとに温度が低下してしまうことです。外温動物であるヘビは、体温を外気に依存しているので、体温の低下は消化不良につながり、未消化の餌を体内に抱えていると、それが腐敗して致命的なダメージにつながることもあります。季節の変わり目の気温の変化の著しい季節には、飼育温度の維持に注意が必要ですし、どうしても充分な温度が確保できないようならば給餌を控えなければなりません。


  アリゾナマウンテンキングスネーク
 ●繁殖について
 キングスネークは、通常は単独飼育するものの、繁殖のためには雌雄を交尾させなければなりません。そのテクニックのことをハンドペアリングと言いますが、ようするにタイミングを見計らって一時的に雌雄を一緒にして交尾を促すことで、それほど難しくはありません。
 交尾は、繁殖シーズンに行なわれるので、それ以外の季節に雌雄を一緒にすることは、共食いを促すだけです。コーンスネークの場合は、冬場加温していても春になると繁殖行動が見られますが、キングスネークにこのパターンはお勧めできません。筆者は試験的にネルソンミルクスネークというキングスネーク属のヘビで、冬場加温した状態でのハンドペアリングを試み、無事に繁殖に成功していますが、この1例をもってキングスネークの体内時計に太鼓判を押す自信はないです。
 ヘビに繁殖シーズンを確実に認識させるためには、冬眠を経験させる必要があります。充分に成熟したキングスネークを冬眠に導き、冬場を温度変化の少ない暗所で過ごさせます。冬場も飲み水は切らさないように。そして春になって充分に気温が安定したら、明るい場所にケージを移し、脱皮を確認したらハンドペアリングを行ないます。
 春は気温変化が著しくポカポカ陽気になっても油断できません。ヘビに限らず動物の冬眠のボーダーラインは、15℃です。朝から気温がそれを上回ったからと言って明るいところにケージを移しても、翌朝は10℃を下回るなんて状況では具合よろしくありません。ヘビは10℃を下回っても平然と動き回ります。水も飲みます。それを見てイケると判断するのは間違いです。確実に交尾を成功させるには20℃以上できれば25℃以上の安定した温度が必要です。自然気温が20℃を下回らなくなるまで待っていると、そこまでヘビを寝かせておくのが難しくなります。そこで役に立つのがヒーターですね。4月に入ったら、そろそろヘビを明るい場所に移し、数日経ったらヒーターを使って25℃ていどまで飼育温度を上げます。飼育温度の上昇は可能な限りゆるやかに行なうのが良いです。
 そして雌雄とも脱皮が確認できたら、メスのケージにオスをいれます。コンディションが悪くなければ、たいていはすみやかに交尾を始めます。小1時間経っても交尾しなかったり、共食いが始まるようなら引き離さなくてはなりません。オスがメスを押さえ込むために噛みつくようなこともあるので、それを共食いと誤認しないように。消極的なオスに対してメスが咬みついている場合は、明らかに餌と見なされていますね。
 ハンドペアリングに失敗したら、数日置いて再トライです。その間に給餌するのもよいでしょう。交尾は数時間かかります。場合によっては10時間以上に達することもあるそうです。交尾を終えたら雌雄を引き離す必要があるので、ハンドペアリングではそれを確認するまで見張っておく必要があります。昼でも夜でも、ご自身の都合のよい時にハンドペアリングを実施し、その間は静かにして余計な刺激を与えないと共に、付きっ切りで見張っておきます。一刻も目を離さないというのはキツいので、読書するなりパソコンをたたくなり、あまり大きな音を出さずにテレビを見るなりしながら、時々ケージを覗くていどで良いです。
 交尾を終えたら通常の飼育に戻りますが、メスのケージにはウェットシェルターを産卵床として設置しておきます。産卵が確認できたら卵を親から引き離し常温で管理します。あとはコーンスネークと同じです。
 生まれたばかりの幼蛇への給餌は2日おきに行なうと言う人もいます。成長期の幼蛇にはどんどん給餌してかまいません。でも2日おきと決めるよりも糞を確認したら給餌というパターンが良いかもしれません。生後1ヶ月もすれば給餌スタンスを週2回くらいにして、成蛇になったら週1回でよいです。もっと与えても悪くはないですが、あまり過剰になりすぎるとさすがに肥満になります。成長期にはどんどん給餌し、肥満が始まったら成熟したと見なして給餌ペースを落とすという方法もあるようです。ヘビにかかりっきりで生活を脅かされないていどに、ご自身のペースに合わせて気楽に管理しましょう。自然界では、飼育下のようにコンスタントに餌が得られるとは限りません。大漁の時もあれば長期間ひもじい思いをすることもあるでしょう。なので、飼育下でもそれほど神経質になる必要はないのです。10日ばかり海外旅行に出かけるから、どっさり食わしておこうなんて配慮は、ヘビに関して言えばバカバカしい話しです。すでに1週間食わしていないのに、身内の傷病等で急に数日家を開けることになったとしても心配無用。ヘビは気長に待っててくれます、衰弱することもなく。どうしても不安なら、水入れを2つ用意しておくとよいかもです。1つがトイレ代わりにされたり、ひっくり返されたりしても、もう1つありますから。まぁ、筆者の場合は、半月以内の不在で餌や飲み水の心配はしませんけど。
 ただ、冬季や生後間もない幼蛇は別です。餌はともかく飲み水の確保には少しばかり気を使います。冬場は暖房で乾燥しやすいうえに、水入れがフィルムヒーターの上に乗って水を蒸発させてしまうなんてケースがたまにあります。ヘビは時々水入れを床材で埋めたり場所を移動させたりして遊びます。暖房にケージの下からのヒーターを使っている場合は、その部分にどっしりしたウェットシェルターを置き、水入れをヒーターの上に移動できないようにすると良いでしょう。

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